今、中小企業にこそ採用サイトが必要な理由
お客様からいただく最近のご依頼で、特に増えているのが「リクルート」のご相談です。
「優秀な人材になかなか出会えない…」
「エントリーの数が減ってきた…」
それくらいのことなら、まだまだ序の口です。
「内定を出したのに直前に辞退が殺到した…」
「予定の半分の人員も採用できなかった…」
こんな悲痛な声がいろんな企業様から届いており、特に中小企業のお客様から多く聞かれます。
採用が売り手市場傾向にある中、企業は「どうすれば学生に選んでもらえるか」を真剣に考えないと、計画的な採用、ひいては経営の存続自体が危ぶまれることになるでしょう。
そこで重要になってくるのが、企業が独自で作る「採用サイト」による情報発信です。
webサイトは、B2B企業の集客やブランディングを図る上で不可欠なオウンドメディアとして認知されてきましたが、リクルーティングについても同様です。
より良い人材を確保するためにはどういった採用サイトを立ち上げればよいのか?
今回のブログは『今、中小企業にこそ採用サイトが必要な理由』と題し、効果的な採用サイトの作り方についてまとめてみました。
求人ポータルサイトと独自の採用サイトの違い
採用サイトの作り方に進む前に、最初に理解しておくべきことがあります。
それは、リクナビやマイナビといった「求人ポータルサイト」と、自社webサイト内の「採用サイト」との違いです。
まず「求人ポータルサイト」の良さは、そのネットワークとデータベースを活かして多くの学生に広くアピールできること。
学生は希望の企業を検索し、会社の一次情報を素早く入手することができます。
しかし学生は、ポータルサイトだけでエントリーするかどうか判断するわけではありません。
エントリー前に必ず企業のホームページを訪問し、事業内容や仕事内容、社風や会社の歴史を細かくチェックすることがわかっています。
中にはGoogle mapで住所を検索し、社屋の外観や裏側までチェックする学生もいるとのことです。
その際に必要なのが、企業がオリジナルで作成した「採用サイト」になります。
一般的に「集客は求人ポータル、ブランディングは自社サイト」と言われており、それぞれの役割をしっかり理解した上で、採用コストのかけ方を検討します。
求人ポータルサイトは毎年契約更新となり、中小企業にとっては大きな出費です。
中には、ポータルサイトは契約せず、最初にある程度費用をかけて独自の採用サイトをつくり、数年間それを活用してトータルコストを抑えているお客様もいらっしゃいます。
企業規模やニーズに応じて使い分けていくのが採用マーケティングのポイントです。
ターゲットを設定し、ほしい人物像を共有化
それでは次に、独自の採用サイトを制作する際に必要なことを見ていきましょう。
まず企業様サイドで行っていただきたいのが「ターゲットの設定」です。
新卒採用サイトの場合、ターゲットは「学生」になりますが、学生といっても十人十色。
あなたの会社はどんなタイプの学生を採用したいのか。
あなたの会社に何をもたらしてくれる人材が欲しいのか。
あなたの会社には仕事に何を求めている人物が合っているのか。
このように、採用したい人物像をなるべく細かく明確にしていきます。
さらには年齢や性別、家族構成、生活エリア、ライフスタイル、趣味趣向など、その人物のプロフィールまで創り上げていきます。
この作業をマーケティングの世界では「ペルソナ分析」といい、架空だけど実在しそうな人物像を設定し、曖昧なターゲットを関係者が共有できるようにするのです。
このペルソナ分析が進むと、その人物の採用活動時の「行動」が見えてくるはずです。
その人物は選考前にこんな情報収集をするだろうな…。
あんなツールを使って採用活動を行うだろうな…。
会社を選考するときに最も重要視することは●●だな…。
こうした行動予測が立つと、コンテンツを作成するときの目安になり、ターゲットを引き付けるコンテンツ設計がしやすくなります。
ターゲットの設定を最初に行う理由はそこにあります。
自分たちが採用したい人物像を共有化することで、ぶれないコンセプトとコンテンツを創り上げます。
学生とのマッチング率を左右するコンセプト設定
ここで言うコンセプトとは、コンテンツ(採用情報)を考える際の「軸」となる共通基準のことです。
効果の高い採用サイトはこの軸がしっかりしており、学生に何を伝えたいのか、どんな思いを持ってほしいのかがくっきりしています。
また、コンセプトは「フィルター」でもあります。
学生自身が、自分がこの会社とマッチングしているのかどうかを判断するときの基準にするからです。
会社が示すコンセプトと自身の思いが合致しなければエントリーを控えるでしょうし、逆にエントリーしてきた学生は会社のコンセプトを理解した上で応募しているので、その時点でマッチングレベルが高いと言ってもよいでしょう。
しかし、多くの人にエントリーしてほしいからといって、学生に迎合したようなメッセージを発するのはタブーです。
ミスマッチであるにもかかわらず内定を決めてしまうと、入社後数年で離職してしまう可能性がますます高まります。
業界にもよりますが、大卒学生が入社3年以内に離職する確率は30%以上と言われています。
コストをかけて採用したにも関わらず、入社後数年で退社されてしまうようでは会社も身が持ちませんよね。
だからこそ、求める人材に会社の理念をしっかり伝え、仕事を正しく理解してもらい、高い志で長く勤めてくれる人材に振り向いてもらえるようなサイトづくりが重要なのです。
学生の興味を喚起するコンテンツの作り方
最後は、ターゲットとコンセプトに合わせたコンテンツ作りについてです。
一般的には以下のようなコンテンツが採用サイトには盛り込まれています。
●キャッチコピー
ターゲットの興味を掻き立てるワンフレーズを作成。主にコンセプトから抽出します。
●キービジュアル
コンセプトをビジュアル化。学生の印象に残るワンビジュアルを作成します。
●代表メッセージ
学生に向けて社長が語ります。最近は動画によるアプローチも増えています。
●社員インタビュー
先輩の声を通じて仕事内容や社風を紹介。対談形式など、表現は様々です。
●事業内容・仕事内容・技術・事例紹介
会社が何をやっているか、どんな職種・技術・事例があるかを紹介します。
●会社概要
企業理念・ビジョン・事業内容・沿革・研修制度など。
●採用情報
募集職種・募集勤務地・募集条件・会社説明会の情報など。
●インターンシップ情報
エントリー前に就業体験できるよう、学生とのコンタクトを増やします。
以上の要素をベースに、ターゲットの嗜好性とコンセプトに合わせて表現をあしらいながらコンテンツを作成します。
たとえば社員インタビューでも、仕事のやりがいに重きを置くか、ワークライフバランスに重きを置くかで表現が変わってきます。
その方向性は、ターゲットとコンセプトが示しています。
競合他社も同様な戦略をとってくる中で、どうやって差別化するか。
学生が入社したいと思える情報は何で、どうやって提供するか。
さらには、採用のコストをどうやって抑えるか…。
とにかく課題だらけの採用サイト作り。
それでも今、はじめなければならない理由、ご理解いただけましたでしょうか。
これを機会にあなたの会社も、本格的な採用ブランディングに着手してみませんか?
プロフィール
古川弘樹/クリエイティブディレクター
理系の大学から広告関係の専門学校へ転身。卒業後は東京・名古屋の広告プロダクションを経て、2005年にアドパブリシテイ入社。ディレクター・コピーライターとして様々なクライアントの販促物制作・プレゼンテーションを担当。趣味は釣り・筋トレ・ラグビー観戦。第55回宣伝会議賞シルバー賞受賞。