ブランディングの次にくるもの
2019.6.7
ブランディング
次なる指標「ラブマーク」
今年、「森の木琴」で有名なクリエイティブディレクター原野守弘さんのセミナーに参加しました。
原野さんの作品映像も素晴らしかったのですが、そこで話された「ラブマーク」についてのお話に目からウロコが……。
これまで感じてはいても、言語化できなかったことが晴れたような気がしましたのでご紹介させていただきます。
2005年に出版されたケビン・ロバーツ著の「永遠に愛されるブランド/ラブマークの誕生」では、消費者の企業・商品に対する印象の分類を、以下の「愛」の軸と「尊敬」の軸からなる座標で説明しています。
見ての通り、左下の低ラブ・低リスペクト枠には「プロダクト(製品)」、左上の低ラブ・高リスペクト枠には「ブランド」が入ります。ここはこれまでもあったブランディング領域です。
一方、右下の高ラブ・低リスペクト枠には「ファッズ(一時的流行)」、右上の高ラブ・高リスペクト枠には「ラブマーク」が入ります。
ここが新しい視座で、右上の「ラブマーク」が目指すべき領域となり、そこに入るためにどんな企業活動をしていくかを考えるための図です。
ケビン・ロバーツの提唱を一言で言うと、これからの企業は尊敬を集めるだけのブランディングでは十分で無くなったということ。愛される企業になるために努力すること、その重要性を説いています。
この「ラブマーク」は定量的なリサーチだけでは読み取れない、消費者の企業・製品に対する印象の分類を考えるための指標です。
なぜWindowsに凌駕されてもMacファンはいなくならなかったか? などを例にあげるとき、この指標を使って感情的なつながりが理屈を超えて消費者と企業をつなげていることが説明できます。
また、身近なところではビジネスでもSNSが盛んになってきた今、コンテンツの内容について社内で話すときなどに指標として使うと便利そうですよね。
そして本書では「合理的か、経済的か、という判断基準しかない者はいずれ行き詰まる」と指摘しています。
「ラブマーク」になるためには
ケビン・ロバーツは、企業がこの「ラブマーク」になるためには、消費者との緊密な接点をより多く持つことが重要と述べています。
データやアンケートだけに頼るのでなく、消費者の買い物シーン、使用シーン、生活シーンに寄り添うことから学び続けていく活動が必要だと。
また、「世界をよりよい場所にしようと試みること」から生まれるインスピレーションこそが「ラブマーク」の源泉とも言っています。
本書は、「企業は世界をよりよい場所にできるだろうか? もちろんできる」と締めくくっています。
愛される企業のメッセージとは
次に、サイモン・シネックのゴールデンサークルに触れてみたいと思います。
優れたリーダーが発するメッセージには共通点があり、以下の順番で語られているようです。
よく考えてみてください。
このメッセージを発信しよう考え始めると、必ず「そもそも我々は何のためにこの社会に存在するか」という哲学的命題を突きつけられますよね。
これからの時代、組織のリーダーはこの哲学的命題をクリアにしていかなくてはならないということ。
大変な課題ですが、ここをクリアしたリーダーのメッセージは多くの人々の共感と感動を呼び、人々の行動を促すようです。
そして今、この哲学に対する注目度が世界的に高まっています。
これからのビジネスには哲学が必須?
最近、グーグルやアップルなどのIT企業は、著名哲学者を「イン・ハウス・フィロソファー(顧問哲学者)」やフルタイムで雇用し始めました。
また、アメリカの大学ではビジネススクールにおいてもロースクールにおいても、哲学は最強エリートに人気の高い専攻となっているようです。
アメリカでは哲学を専攻した人の社会的ステータスが高くなっている傾向だからだそうです。
これらの事実は、高度情報化社会が進むにつれ情報の本質、具体的には事業や活動、商品やサービスの本質が重要視される社会になってきていることを示しているのではないでしょうか。
「No philosophy, No business」
世界はいま大きく変わり始めており、哲学なき経営はやがて淘汰されていく予感がしてなりません。
ブランディングの次にくるもの まとめ
ビジネスをする上で愛と尊敬を集めることが重要になってきた時代、いずれ日本でも「企業哲学」の見直しが迫られてくることでしょう。
企業ブランディングを考えるときに、あなたの会社の存在理由である「企業哲学」から、もう一度掘り下げて一緒に考えてみませんか。
カタログパートナーズでは今後も、これまでの制作キャリアの中で培ってきた会社案内制作のノウハウ、会社案内の付加価値を高めていく様々な情報を随時公開していきますので、ぜひお見逃しなく。
プロフィール
水野成俊/クリエイティブディレクター
美術系大学から広告プロダクションを経て、2000年アドパブリシテイ入社。
ディレクターとしてメーカー販促物制作・プレゼンテーションを担当。
安酒、ヘボ碁、ヘボギターを愛するオジサンです。